抄録
植物は避陰反応と呼ばれる機構を持ち、自らが他の植物の陰になったことを認識し、その陰から逃れようとする。この避陰反応機構にはフィトクロムが関与していることが知られている。我々はフィトクロムによるEnd-of-day Far-red処理とオーキシン添加の両方に応答してレポーター遺伝子の発現が上昇するプロモータートラップ系統を単離し、その光応答様式について解析した (Tanaka et al. 2002 PCP 43, 1171-)。その結果、子葉のフィトクロムが胚軸における遺伝子発現を、オーキシンを介して制御していることが明らかになった。このシグナル伝達機構の分子メカニズムを解明する目的で、単離されたプロモータートラップ系統の一つを突然変異処理して得られた集団をスクリーニングし、レポーター遺伝子の発現が異常となったreg1およびrig1変異体を単離した。これらの変異体においては、暗所で生育させた場合、胚軸伸長が親株のプロモータートラップ系統と比較して抑制される表現型を示した。しかしながら、reg1ではGUS遺伝子の発現は野生型よりも低く、rig1では高かった。このうちGUS発現の上昇するrig1系統においては、End-of-day Far-red反応に関しても胚軸伸長に異常が見られた。