【目的】本研究の目的は,緩和ケアの専門家が不在の施設に所属する医師が抱くがん患者への緩和ケア提供上の困難を明らかにすることである.【方法】A県内にある日本緩和医療学会認定医,専門医等の緩和ケアの専門家が不在の施設に所属するがん医療に携わる医師11名を対象に半構成的面接を実施し,内容分析を行った.【結果】対象者は,がん患者の症状に対する迅速な対応を求められるが,周辺に相談可能な施設がなく《地域連携における困難》があるなか,専門家や自施設の医療者に相談できず《緩和ケアに係る相談における困難》を抱いていた.また,がん患者が持つ複雑性の高い症状への《症状緩和における困難》を経験していた.背景には,多忙さなどの《医師個人の緩和ケア提供の基盤における困難》があった.【結論】迅速な症状緩和が必要な場合や複雑性の高い症状へ対応するために,専門家の継続的な外部コンサルテーション体制構築の必要性が示唆された.