抄録
われわれは、病原菌非存在下で細胞死を発現するシロイヌナズナの突然変異体(len3: lesion initiation)をいくつか単離してきている。そのうちlen3変異体は生長にともない、その葉において細胞死を発現した。また、len3変異体においては、Pathogenesis-related (PR) 遺伝子の発現誘導が見られ、サリチル酸も高濃度に蓄積していた。このlen3変異体における細胞死発現シグナリングを明らかにするために、len3変異体とnahG, npr1, およびpad4変異体との交配を行い、得られた二重突然変異体を解析した。len3 nahG植物体では細胞死の発現が見られず、PR遺伝子の発現も抑制されていた。また、len3 npr1およびlen3 pad4植物体もlen3 nahG植物体と同様な表現型を示した。しかし、len3 nahG植物体にサリチル酸アナログBTHを処理すると細胞死発現が回復したが、len3 npr1およびlen3 pad4植物体では回復しなかった。以上のことから、len3変異体における細胞死発現には、サリチル酸の蓄積およびサリチル酸シグナル伝達が必要であるとともに、PAD4依存的なシグナル因子の関与が示唆された。