抄録
硫黄は主要な一次代謝産物を構成する必須元素であり、植物は硫酸イオンを根から吸収することでその取り込みを行っている。根の表皮と皮層で発現する高親和型硫酸イオントランスポーターSULTR1;2は硫黄欠乏時に転写レベルで発現量を増加させることで硫酸イオンの吸収を促進させるが、転写因子の同定を始めとした詳細な分子機構の解明には至っていない。本研究はSULTR1;2遺伝子の発現量が変化した突然変異株を解析することで、制御に関わる因子の同定とその解析を目指している。
これまでにSULTR1;2遺伝子のプロモーター領域にGFP遺伝子を繋いだ融合遺伝子をもつトランスジェニック・シロイヌナズナが作出されている。この植物を硫黄欠乏条件下で生育させると根におけるGFP蛍光が増加する。今回、これを親株としてEMSにより突然誘起処理を行い、親株よりもさらに高いGFP蛍光を示す硫黄欠乏過剰応答株の分離を行った。得られた候補株の数株では実際にSULTR1;2遺伝子の発現量が増加していたことから、目的とする変異株であることが示唆された。