抄録
植物が塩にさらされると、塩が体内に吸収・蓄積して障害が引き起こされる。したがって、植物の耐塩性強化のためには、塩輸送に関わる因子の探索および塩輸送機構の制御が重要である。我々はこれまでにシロイヌナズナ膜タンパク質RCI2Aの遺伝子破壊株を用いた解析を行い、RCI2Aが植物の塩の吸収抑制に関与することを見いだした。そこで本研究では、シロイヌナズナのRCI2A過剰発現株を作製し、塩の吸収および塩ストレス障害発現におけるRCI2Aの役割を調べた。
その結果、高NaCl処理下において、RCI2A過剰発現株のシュートでは野生株に比べてNa+の蓄積および生長の抑制が減少した。また、塩処理した植物ではクロロフィル含量の減少、MDA含量の増加およびH2O2生成の増加が見られたが、その程度はRCI2Aの過剰発現により緩和された。したがって、植物においてRCI2Aの高発現により塩ストレス下でのNa+の吸収が抑制された結果、Na+の増加に伴う生育の抑制や障害が緩和されたと考えられた。