抄録
植物は環境変化に適応するために様々な応答をしており、遺伝子レベルでの応答機構に関する研究が広く行われているが、タンパク質の応答機構や翻訳後修飾に関しては不明な点が多い。実際の環境適応機構の解析のためには、タンパク質の発現量比較や、翻訳後修飾の解析が欠かせない。そこで本研究では、既にDNAマイクロアレイを用いた解析が多くなされているが、タンパク質レベルでの解析例が少ないSynechocystis sp. PCC 6803を用いて塩、浸透圧ストレスに対するプロテオーム解析を試みた。
塩、浸透圧ストレス処理には、終濃度0.35MになるようNaCl、sorbitolを加え、1週間培養を行った。この細胞を回収しガラスビーズで破砕した後、可溶性タンパク質と膜タンパク質に分離し、それぞれを二次元電気泳動とMALDI TOF-MSおよびLC-MSによるプロファイリングとタンパク質の同定を行った。その結果、イオン輸送、代謝に関連するタンパク質のほか機能未知のタンパク質の増減が確認され、DNAマイクロアレイでの結果とは異なるタンパク質も多かった。これらの結果と遺伝子レベルの結果を比較して、塩、浸透圧ストレスに対する応答機構に関して議論する。