日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナFtsHプロテアーゼの機能解析
*天野 豊己坂本 亘塩井 祐三
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p. 864

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抄録
セネセンス(老化)は、不要となった組織から有用成分を回収し、他所に転流して使用するための遺伝的プログラムである。特に葉緑体は、窒素源としてのタンパク質を豊富に含んでいることから、セネセンスによって積極的に分解・再利用されるオルガネラである。しかし、この分解の分子機構は現在までのところ未解明である。
葉緑体内のタンパク質分解系には、バクテリアと類似性の高いATP依存性プロテアーゼが発達している。これらの中で特にFtsHプロテアーゼは、葉緑体チラコイド膜に存在し、光阻害をうけた光化学系IIの代謝回転に関与する。このため、葉緑体内のタンパク質の分解を行うプロテアーゼであるといえる。
シロイヌナズナのFtsHプロテアーゼは、2種類のサブユニット、すなわちVAR1とVAR2から構成されている。それぞれの配列からN末端部分に存在する疎水領域を除去したものを用い、大腸菌を宿主として大量発現を行った。本酵素の大量発現系は、多くの場合にインクルージョンボディーを形成する。このため、機能的なタンパク質を解析することは難しい。
本研究では、インクルージョンボディーを尿素によって変性させた後、還元剤存在下で巻き戻すことにより、可溶性画分にFtsHプロテアーゼが回収されることを見出した。現在、最適な基質タンパク質の同定、酵素学的パラメーターの算出など、生化学的手法を中心に解析を進めている。
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© 2006 日本植物生理学会
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