日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ジャスモン酸によって誘導されるイネ懸濁培養細胞の細胞質酸性化
*矢崎 芳明Riemann Michael南 栄一坂野 勝啓大橋 祐子高野 誠
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p. 866

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抄録
イネにおいて、赤色光によって植物ホルモンの一種であるジャスモン酸(Jasmonate; JA)の生合成が誘導されることが知られている。一方、エリシター応答性遺伝子のいくつかは、イネ(日本晴)懸濁培養細胞において、細胞質酸性化によって遺伝子の発現が誘導されることがすでに報告されている。このように各種環境応答によって引き起こされた植物細胞の細胞質酸性化は、いくつかの遺伝子発現のトリガーになる可能性がある。そこで、イネ(ムサシコガネ)懸濁培養細胞において、ジャスモン酸が細胞質pHに及ぼす影響を31P-NMR法により調べてみた(ここではJAと同じ効果を示すジャスモン酸メチルMeJAを用いた)。その結果、マイクロモル、ナノモルオーダーのジャスモン酸は、エリシターの場合と同じく同程度(およそ0.5 pH unit)の一過的な細胞質酸性化(1時間以内にはじめのpHに回復する)を誘導することがわかった。しかし、さらに微量(ピコモルオーダー)のジャスモン酸では、細胞質酸性化は起こらなかった。イネの細胞では、赤色光によってジャスモン酸の生合成を引き起こし、そのジャスモン酸によって細胞質が酸性化すれば、pHの変化(酸性化)によって発現にトリガーのかかるような遺伝子を、赤色光により発現誘導できる可能性が示唆された。
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© 2006 日本植物生理学会
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