抄録
シロイヌナズナにおける最近の研究からHis-Aspリン酸リレー系がサイトカイニン応答の初期情報伝達機構における中心的役割を担っていることが明らかとなった。しかしサイトカイニンの作用は多岐におよび、リン酸リレー系により制御される下流の遺伝子発現ネットワークも極めて複雑であることが予想される。それらを解析するアプローチの一つとして、我々はDNAマイクロアレイ解析を用いたリン酸リレー依存的なサイトカイニン初期誘導性遺伝子群の検索を行ってきた。今回は、その中でも特に興味深いと思われた以下のサイトカイニン初期応答遺伝子を選び、順・逆遺伝学的解析を含めて、サイトカイニン応答性生理機能との関連に焦点を当てて解析した。それらは、(1)葉の形態形成に関わるAS2ファミリーに属する ASL9(At1g16530)、(2)光応答性GATA型Zn-フィンガー転写因子であるCGA1(At4g26150)、(3)単一のSANT/Mybドメインを持つ、RADI1(At2g21650)である。また、これらに遺伝子に加えて、それらと相同性の高いパラログと思われる遺伝子も併せて解析した。これらの結果をまとめながら、サイトカイニン応答性情報伝達ネットワークを構成すると期待される新規因子群の働きに関して考察する。