抄録
アクアポリンが葉の内部での二酸化炭素拡散を促進するかどうかを検証するため、オオムギアクアポリンHvPIP2;1を過剰発現させた形質転換イネの葉を用いてCO2拡散に対する葉の内部コンダクタンス(gi)、光合成速度および葉の内部形態を調べた。giはインタクトの葉を用いて、ガス交換と炭素安定同位体比の同時測定によって推定した。HvPIP2;1の抗体によって検出されたアクアポリンのレベル(Aq-anti-HvPIP2;1)がもっとも高かった葉は野生型と比較するとgiが40%増加していた。同時に、CO2同化速度と気孔コンダクタンスもそれぞれ14%および27%増加していた。また、Aq-anti- HvPIP2;1が高かった葉は葉肉細胞のサイズが減少し、表皮や葉肉細胞の細胞壁が厚くなっており、乾燥ストレスを受けた場合に生じる形態となっていることが示された。これらの結果から、アクアポリンには葉の内部での二酸化炭素拡散を促進する役割があること、またアクアポリン増加は葉の水分状態に影響を与え、二次的な葉の形態変化を引き起こす可能性があることが示された。