日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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森林形成によるCO2吸収能増大の見積もりについて
*寺島 一郎曽根 恒星野口 航
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p. S020

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抄録
森林が成立するのは,放射乾燥度(λ,降水量を全部蒸発させるのに必要なエネルギーに対する純放射量の比)が1よりも小さく,植物が水を確保できる土地である。λが1以上の土地には灌木の疎林や草原が成立している。草原の純生産量は森林にひけをとらない。しかし,バイオマスはすぐに分解してしまう。一方,λが1以上の土地に乾燥耐性の強い樹木を植えると,純生産量の飛躍的な増大は期待できないが,適切な管理下では純生産量の大部分をバイオマスとして貯えることが可能である(寺島,2004)。
一方,地球環境変化は森林のCO2吸収に大きな影響をおよぼす。大気CO2濃度の上昇による純生産の変化は,光合成生産に,成長や貯蔵器官の肥大がいかに追随するかに依存している。われわれは樹木の光合成生産と枝の成長との関係を調べてきた。その結果,枝の成長は光合成生産だけではなくその枝の成長活性にも強く依存していることが明らかになった(Sone et al. 2005)。すなわち,枝の成長は光合成産物の需要と供給によって決定されている。同等の光合成生産を行う枝の間でも,枝成長の優先度に依存して成長には大きな差が生じる。今後は,枝における光合成産物の需要を決定する仕組みを探り,シンク能制御への途を開きたい。

寺島一郎 (2004) 植物と環境.甲山隆司ら著 植物生態学 pp.1-41, 朝倉書店
Sone et al. (2005) Tree Physiology 25: 39-48.
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© 2006 日本植物生理学会
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