日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
星状神経節ブロックが有効であった難治性顎関節症(筋膜痛)の治療経験
野口 美穂野口 智康福田 謙一
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2021 年 13 巻 1 号 p. 111-116

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抄録

症例の概要:50歳,男性.10年前から顎が痛むことを主訴に来院した.5年間大学病院で治療を受けるも,改善,悪化を繰り返していた.症状は次第に悪化し,食事が困難な状態であったため当科に転科となった.無痛開口量は25mm,強制開口量は37mmであった.咬筋に開閉口時痛と自発痛を認めた.筋触診では両側側頭筋,両側咬筋に圧痛を認め,両側咬筋に放散痛,右咬筋に激痛を認めた.心理社会的評価は高い不安状態であった.両側咬筋,右側側頭筋の筋膜痛と診断し治療を開始したが一般的な顎関節症の初期治療(セルフマッサージ,マイオモニター,レーザー療法,アプライアンス療法,トリガーポイント注射など)では良好な治療結果が得られなかった.そこで星状神経節ブロックを施行したところ良好な疼痛コントロールが可能となった.
考察:本症例は長期間痛みのコントロールが困難な難治性顎関節症(筋膜痛)であった.星状神経節ブロックで鎮痛効果が得られたことから,本症例の病態は,筋肉の末梢循環障害や交感神経依存性疼痛の可能性が考えられ,一般的な顎関節症の初期治療が奏効しにくい状態であったと思われた.
結論:本症例のように一般的な顎関節症の初期治療では良好な結果が得られない難治性の筋膜痛に対して星状神経節ブロックは価値のある治療法であった.

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