抄録
rrd1は、カルスからの不定根形成を指標に単離したシロイヌナズナ温度感受性変異体の一つで、制限温度下で帯化根を形成する点に特徴がある。半同調的側根形成誘導系を利用した温度シフト実験により、rrd1変異体の帯化根形成を詳しく調べたところ、原基形成の初期段階で制限温度に曝露された側根が帯化することがわかった。これより、rrd1変異体における帯化根形成の原因は、原基形成に際して細胞増殖域の限定化が十分に起こらず、増殖域が拡大することとにあると考えられた。
rrd1変異体の責任遺伝子RRD1をポジショナルクローニングによって単離するために、精密染色体マッピングを行った。その結果、rrd1変異の存在域は、第3染色体の40 cMの位置、約85 kbpの範囲に限定された。rrd1ゲノムの当該領域の塩基配列を解析したところ、ポリA特異的リボヌクレアーゼ(PARN)に類似したタンパク質をコードしているAt3g25430に一塩基突然変異が見出された。この変異はTrpコドンを終止コドンに変え、全長618アミノ酸残基のタンパク質からC末端89残基を欠落させるもので、rrd1変異体の温度感受性の原因となっている可能性が高い。