抄録
高等植物では、花成誘導や胚乳のインプリンティングなど発生にかかわる様々な現象においてエピジェネティックな遺伝子の発現制御が行われていることが知られている。しかし、植物の個体としての形態形成において重要なステップであると考えられる維管束組織の形成過程でエピジェネティックな遺伝子発現制御が行われているか否かは、未だに明らかにされていない。そこで、道管の分化過程におけるクロマチンの動態に関する知見を得るために、単離した葉肉細胞の状態から管状要素分化過程を観察することのできるヒャクニチソウの培養系を用いて研究を開始した。まずDNA メチル化酵素阻害剤5-azacytidine とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤TSA の添加実験を行った。いずれの阻害剤を添加した場合でも、細胞分裂には大きな影響はみられなかったが、阻害剤の濃度および添加時間に依存的に管状要素への分化が阻害された。これは管状要素分化過程においてもクロマチンリモデリングが遺伝子の発現制御に関与している可能性を示唆している。また、新たに開発したヒャクニチソウジーンチップzinnia-17k を用いてマイクロアレイ解析を行っているので、その結果も合わせて報告する。