日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

ミトコンドリア特異的な膜脂質・カルジオリピンの機能
*片山 健太和田 元
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 007

詳細
抄録

カルジオリピン(CL)は、真正細菌から動植物のミトコンドリアにまで広く存在する特徴的な構造をもったリン脂質である。私たちは真核多細胞生物で初めてCL合成酵素遺伝子CLSを同定し、その遺伝子にT-DNAが挿入されたタグラインclsを解析することで、CLの機能を検討している。
通常栽培条件下のCLS/clsにおいて発生の初期過程で1/4の胚が萎縮するのが観察され、回収した種子を播種してもcls/clsなる植物体が得られず、また外来のCLS cDNAを導入した株ではcls/clsなる植物体が得られた。このため、CLSの破壊は胚性致死になるとこれまで報告してきた。しかしながら、YFPによってミトコンドリアを可視化したところ、CLS/clsの果実中でミトコンドリアの形態異常をもつ胚を発見し、これをcls/clsと推測して胚の発生過程を観察した。そして、その結果を踏まえて栽培条件等に改良を加えたところ、cls/clsなる植物体を得ることに成功した。cls/clsは子葉の維管束パターンが不完全であり、根をはじめとして生長が著しく遅い。また、乾燥に弱く、早い段階で頂芽優勢が崩れるなど、様々な異常を呈した。そこで、CLSの発現を推測するため、プロモーターGUS解析を行ったところ、発生後期の胚及び若い葉を中心としたシュートの維管束、気孔の孔辺細胞、主根のコルメラ細胞などが強く染色された。

著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top