抄録
葉酸は核酸やアミノ酸の合成時において広く補酵素として機能することが知られており、生物の生存に不可欠な因子である。茎頂分裂組織 (SAM) 及び前形成層関連遺伝子として、葉酸のグルタミン酸鎖切断酵素 Gamma-Glutamyl Hydorolase 1 (GGH1) をコードする遺伝子を単離した。GGH 遺伝子群の過剰発現植物体や発現抑制植物体において示された形態異常から、葉酸の活性制御が未分化状態の細胞の維持と分化の制御に重要な役割を果たしていると考えられることを前回の植物生理学会年会において報告した。今回は幹細胞維持における葉酸作用の解明を目指した解析結果について報告する。まず、シロイヌナズナゲノム中に 3 つ存在する各 GGH 遺伝子の発現解析を行った。GGH2 遺伝子の発現パターンは既に明らかにしていた GGH1 遺伝子のものと類似していたが、GGH3 遺伝子は限られた領域でのみ発現していた。次に、1 個から 8 個までのグルタミン酸鎖を持つ葉酸のヒャクニチソウ管状要素分化阻害効果について解析した。その結果、管状要素分化を阻害するのは 3 個から 7 個までのものであることを明らかにした。これらの結果より、多グルタミン酸型葉酸の幹細胞維持への寄与と GGH の関与について考察する。