日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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PHDフィンガー型転写因子をコードするシロイヌナズナMS1遺伝子は減数分裂後のタペート層と花粉形成を制御する
*伊藤 卓也永田 典子吉羽 洋周高木 優Ma Hong篠崎 一雄
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p. 009

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抄録

減数分裂後の花粉成熟過程で小胞子は、受粉・発芽・受精に備えた体制を構築する。減数分裂後の四分子期一過的、タペート層特異的に発現し、PHDフィンガーモチーフを含むタンパク質をコードするシロイヌナズナMS1遺伝子は、初期の成熟過程に関与することが示唆されている。そこで我々は、花粉成熟機構を理解するために、MS1遺伝子の機能解析を細胞生物学的・分子生物学的、両側面から行った。完全不稔を示すms1突然変異体と部分的な不稔を示すMS1-SRDX形質転換体の表現型解析から、MS1は花粉とタペート層の発生に重要であることが示された。(SRDXは転写抑制ドメイン。)また、MS1-SRDX形質転換体がms1様表現型を示したこと、MS1は核移行シグナルおよび機能的PHDモチーフを持つことから、MS1は転写因子として機能していることが強く示唆された。一方、マイクロアレイの公開データとグルココルチコイド誘導系を用いて、MS1遺伝子が制御する下流遺伝子群の探索を行った。その結果、スポロポレニン合成に関与すると思われる遺伝子群や、タンパク質のオルガネラ輸送に関与すると思われる遺伝子群、転写因子群などがMS1に近い下流遺伝子であることが明らかとなった。これらの推定遺伝子機能は、ms1突然変異体とMS1-SRDX形質転換体の表現型を説明できる。また、MS1制御系の高等植物における普遍性も議論する。

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© 2007 日本植物生理学会
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