抄録
シロイヌナズナのSPL10はSBP-boxファミリーに属する植物特異的転写因子である。このファミリーは、SBPドメインをDNA結合領域として持ち、AP1プロモーターへの結合が示されていることから、花で機能することが示唆されている。しかし、それらの生物学的な役割は、まだ不明な点が多い。我々はSPL10の機能を調べるため、形質転換体を用いた解析を行った。SPL10に転写抑制ドメインを付加したキメラリプレッサー(SPL10-SRDX)を植物体内で過剰発現させると、頂芽優勢の欠失、矮小化、花序形態の異常、花器官およびさやの縮小化が見られた。さやはful変異体と同様な表現型を示した。FULはAP1の相同遺伝子であり、一部重複した機能を持つ。35S:SPL10-SRDX植物体ではFULの発現が低下していたが、AP1の発現は野生型と差がなかった。次に、SPL10過剰発現体を作出したが、形態に変化は見られなかった。しかし、SPL10はmicroRNAの標的となる配列を持つことから、その配列に変異を導入したSPL10を過剰発現させた植物体を作出したところ、ロゼット葉の茎生葉化が見られ、さらに、FULの発現が上昇していることが明らかになった。また、トランジェントアッセイの結果から、SPL10はFULプロモーターに結合することが示唆された。以上の結果から、SPL10はFULの発現を直接制御し、microRNAにより機能部位を制限されていることが示唆される。