日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物特異的な転写因子TCPによる分裂組織形成の制御
*小山 知嗣古谷 将彦田坂 昌生高木 優
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p. 014

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抄録
TCP転写因子は葉の形状を制御することが知られているが、その機能については明らかになっていない。そこで、キメラリプレッサーを植物内で発現させることによりその標的遺伝子の発現を抑制するCRES-Tシステムを用い、TCPの機能解析を行った。その結果、TCPキメラリプレッサーを発現させた植物体では、子葉や葉、がくや花弁などの花器官の形態に異常を示し、子葉において異所的なシュートを形成することを明らかにした。CUP SHAPED COTYLEDONs (CUCs)は器官境界部で特異的に発現し、分裂組織形成に必要な制御因子であるが、TCPキメラリプレッサー発現体では、CUCが本来発現を示さない子葉やロゼット葉を含む各器官において異所発現することが判った。さらにTCP3キメラリプレッサー発現体では、CUC転写産物を切断するmiR164の蓄積量の減少が認められた。一方、TCP3を過剰発現させた植物では、CUCの発現が抑制され、CUC遺伝子の欠損株と似た形態を示した。また、TCP3遺伝子の発現は子葉において認められたが、CUC遺伝子の発現部位である子葉の境界部には認められなかった。これらの結果からTCP3キメラリプレッサー発現体における形態異常の原因はCUCの異所発現であり、子葉で発現するTCP3がCUCの発現を負に調節することにより、地上部器官の形態や分裂組織の形成を制御すると考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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