抄録
acaulis1 (acl1) 変異体は、22°Cでは葉や茎の形態異常をしめす。強い表現型を持つacl1-1変異体のロゼットは直径1cm前後にしか展開せず、花茎もわずかにロゼットの高さを超す程度にしか伸長しないが、28°Cで育てると野生株と同様の形態にまで回復する。温度とacl1植物形態の関係を詳細に調べるため、22°Cから28°Cまで2°C刻みに生育温度を設定し植物を育てた。弱い表現型を示すacl1-3植物体は24°Cにおいて多少の回復が見られた一方、acl1-1植物体に変化は見られず26°Cにおいて劇的に植物形態が回復した。acaulis 変異体の一つであるacl2-1変異体は28°Cにおいて完全に植物形態が回復しないことからも、回復に必要な温度は各acl変異体異なると思われる。高温下での形態回復という現象に関わる経路が共通であるなら、この事実は興味深い。また、窒素化合物を多く含む培地上ではacl1変異体が大きく成長することも発見し、窒素化合物の量と種類の違いが与える影響についても調べている。培地中のNH4NO3濃度に依存してacl1-1植物体は大きくなるが、温度による回復とは異なり葉や茎の完全な形態回復は見られず、硝酸塩のみを与えても効果はない。これらの温度・窒素化合物とacl1植物形態との関係から、現在クローニングを行っているACL1遺伝子の機能についても考察をする予定である。