抄録
トランスゴルジネットワーク(TGN)は, 小胞体からゴルジ体へと輸送されたタンパク質が, 液胞, 細胞膜等の目的地別に選別・輸送される際の分岐点となる重要なオルガネラである. しかし、高等植物においてはTGNの定義は曖昧であり, 動物・酵母においてTGNに局在するSNARE分子のオーソログ, AtTlg2a/Syp41が局在するオルガネラを便宜的にTGNと呼んでいるものの, その構造・機能は全く明らかにされていない. そこで我々は, 高等植物のTGNの構造・機能・動態を明らかにするため, AtTlg2a/Syp41をTGNマーカーとして, GFP-AtTlg2a/Syp41融合タンパク質を発現する形質転換体を作成した. GFP蛍光を観察した結果, TGNはドット状のオルガネラであることが分かった. また, ゴルジ体のシスマーカーとしてAtSed5/Syp31, トランスマーカーとしてST(sialyl transferase)を共発現させたところ, TGNはゴルジ体のトランス側に存在するものの, 一部はゴルジ体とは独立して存在した. 更に, FM4-64による染色を行ったところ, TGNはFM4-64で染色された. 以上の結果から, 高等植物のTGNは, 主にゴルジ体のトランス側に存在するが, 一部はゴルジ体とは独立したオルガネラであり, 生合成経路だけではなくエンドサイトーシス経路でも機能しているオルガネラであることが示唆された.