抄録
植物細胞内のペルオキシソームは発芽段階から黄化に至るまで多彩な機能を司っている。緑葉組織においては緑葉ペルオキシソームが光呼吸の代謝や傷害で誘導されるジャスモン酸の合成などに関与している。光呼吸に関してペルオキシソームは葉緑体、ミトコンドリアと、またジャスモン酸の合成系に於いては葉緑体と代謝系を共有している。現在までに根の組織におけるペルオキシソームの形態や運動については細胞骨格との関わりを示唆した報告がある(Mano et al, 2002)。しかし葉肉細胞内で観察した報告はほとんど知られていない。今回我々はペルオキシソームや細胞骨格等が蛍光タンパク質で可視化されたシロイヌナズナの形質転換体を用いることにより、葉肉細胞におけるペルオキシソームの局在機構に関する観察を行った。ペルオキシソームの局在機構を制御する条件等を詳細に調べると共に局在に異常のある変異株をEMS処理した突然変異体ラインから数種類選抜した。野生株と変異株を用いた生理学的解析から葉肉細胞内のペルオキシソームは非常に動的であり、かつ独自の局在機構を持つことが示唆された。