日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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根の培養初期に一過的に生成する新規なIBA代謝物の作用性
*横山 峰幸山口 祥子綾野 まどか郷田 秀樹飯田 年以牛江 麻紀子吉田 茂男
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p. 044

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抄録
ミシマサイコ(Bupleurum falcatum L.)の培養根をインドール酪酸(IBA)を含む液体培地に植えると約2週間後に活発な発根が起きる。このIBAの効果はストレス依存的であった(Plant Biotech. 20: 331-334)。そこで、ストレス感受期(培養開始翌日)の培地中に特徴的なIBA代謝物を検索したところ、新規なIBA誘導体(IBL、4-(3-indolyl)-4-butanolide)を発見した。IBLはIBAの酪酸の4位が水酸化され、引き続き自動的にラクトン環を形成して蓄積したものと推察される。
化学合成したIBLを用いてその生理作用を詳しく解析した。その結果、IBLはIBAとは様式の異なる発根誘導作用を示した。すなわち、IBAはミシマサイコ培養根の皮層細胞を拡大・分裂させ、培養根を膨潤させた後に発根を誘導したが、IBLは細胞分裂だけを誘導し、細胞を拡大させることは全くなかった。また、IBLは典型的なオーキシン作用であるダイコン子葉の偏向生長や根の伸長抑制作用も示さなかった。さらに、IBAに加えてヒスチジンを添加、あるいはIBAの添加時期を遅らせる処理を行うと発根は誘導されず、IBLもほとんど生成しないことも判明した。このように、IBLはきわめて特異性の高い発根作用物質であることが明確に示された。
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© 2007 日本植物生理学会
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