日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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IAA-アミノ酸複合体合成酵素阻害剤を用いた管状要素分化過程でのオーキシン代謝の解析
*吉田 彩子甲斐 建次水谷 正治平竹 潤宮川 恒福田 裕穂
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p. 043

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抄録
オーキシンは植物の成長過程で多様な生理現象を制御し、植物体内のオーキシン代謝は厳密に調節される。ヒャクニチソウ培養細胞系では、単離した葉肉細胞をオーキシン、サイトカイニンと共に培養すると、細胞分裂と道管細胞(管状要素)の分化が誘導される。この系にオーキシン極性輸送阻害剤(NPA)を投与すると、管状要素の分化と細胞分裂が阻害されることが分かっている。放射性同位元素を用いた解析からNPAはオーキシン代謝経路を活性化し、その結果として、代謝型オーキシンの増加と遊離型オーキシンの減少が起こり、分化と分裂が抑制されることが示唆された。今回、我々は新規のIAA-アミノ酸複合体合成酵素阻害剤(IAA-SA, NAA-SA, PAA-SA, 2,4-D-SA)を用いて、ヒャクニチソウの管状要素分化過程におけるオーキシン代謝を解析した。するとNPA処理でIAA-Asp、IAA-Glu等の結合型IAAが増加し、遊離型IAAが減少することがわかった。次に、極性輸送阻害剤処理した細胞に、NAA-SAを投与してその影響を調べたところ、結合型IAAの著しい減少が観察された。その際、細胞分裂の阻害が打ち消され、分裂率が回復することがわかった。管状要素分化は非常にわずかだけ回復することがあった。これらの結果から、オーキシン代謝と極性輸送阻害剤、さらに細胞分裂・分化におけるオーキシンの役割について考察する。
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© 2007 日本植物生理学会
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