抄録
これまでに、演者らは低リン条件で育つイネにおいて強く発現が誘導される機能未知遺伝子OsPI1を単離した。低リン条件で迅速に発現が誘導されるOsPI1は低リン適応機構において重要な役割を果たしていると考えられる。また、OsPI1は低リン誘導性の機能未知non-coding RNAからなるTPSI1/Mt4 familyに属することが示唆されている。このファミリーに属する遺伝子は低リン条件下でリン酸の再転流機構を制御する可能性がシロイヌナズナにおいて示唆されているが、その詳細はまだ解明されていない。本研究では低リン条件に強い植物の一つであるイネから単離されたOsPI1について、RNAiノックダウン株を解析に用いることでその機能に迫った。
ホモ系統として確立した2つのOsPI1ノックダウン株と野生株(キタアケ)の水耕栽培(+P: 0 ppm、-P: 1 ppm)を行った。処理10日目の植物体について、地上部と地下部に分けてマイクロアレイ解析を実施した結果、低リン条件で認められるリン酸再転流に関わるいくつかの遺伝子の発現変動が野生株よりノックダウン株で小さくなることがわかった。また-P区での全リン濃度はノックダウン株で野生株よりも高く、root/shoot比はノックダウン株で野生株より低かった。これらの結果から、OsPI1がリン酸再転流機構を正常に機能させる上で重要な役割を果たしていることが示唆された。