抄録
システイン合成酵素(CSase)は、硫化物イオンとO-アセチルセリンからシステインを生成する酵素である。シロイヌナズナゲノムには、9つのCSase様遺伝子(Bsas)が存在する。それらのうち遺伝子発現量及び基質親和性からBsas1;1、2;1、2;2は主要CSaseと考えられており、Bsas3;1はCSaseよりもシステインと青酸イオンを基質とするβ-シアノアラニン合成酵素(CASase)であることが示唆されている。しかしながら、植物体内での各Bsasアイソフォームの役割の違いは明らかとなっていない。本研究では、各Bsasの役割を解明するために、各BsasのT-DNA挿入変異株を単離し、遺伝子発現解析、活性測定及び代謝物分析を行った。各変異株におけるBsasの発現量を測定した結果、野生型株と比較して各標的Bsasの発現は抑制されていたが、その他のBsasの発現量に著しい変化は観察されなかった。活性測定の結果、野生型株と比較してbsas1;1変異株のCSase活性は54%に減少し、bsas3;1変異株のCASase活性は36%に減少した。また、bsas1;1変異株においてシステイン蓄積量の減少が観察された。これらのことから、Bsas1;1は植物体内でのシステイン合成に、Bsas3;1はβ-シアノアラニン合成において最も重要な役割を果たしていることが示唆された。