日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)におけるステロール側鎖不飽和化酵素CYP710Aの同定
*森川 智美嵯峨 寛久太田 大策
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p. 062

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抄録
ステロールは真核生物の膜構成成分として,またステロイドホルモン前駆体として細胞機能に必須の役割を担うがその組成は生物種により多様である.高等植物における膜ステロール生合成最終段階である側鎖不飽和化反応は,シトクロムP450であるCYP710Aが担う.シロイヌナズナCYP710A1のアミノ酸配列を用いた相同性検索の結果,ヒメツリガネゴケゲノムに2種のCYP710Aをコードすると予測される配列を同定した.逆転写PCRにより得た2種のヒメツリガネゴケCYP710A遺伝子コード領域(Pp710A13, Pp710A14)はアミノ酸レベルで81.2 %の相同性を示し,またシロイヌナズナCYP710A1の基質認識に関与すると予測される領域の構造がよく保存されていた.半定量的PCRではPp710A遺伝子は原糸体形成の初期段階において特異的な発現が見られた.シロイヌナズナT87培養細胞において作製したPp710A過剰発現株のステロールプロファイリングの結果,側鎖不飽和ステロールであるスチグマステロールの顕著な蓄積が見られた.また昆虫細胞発現系にて作製した組換えPp710Aタンパク質のβ-シトステロールを基質したP450反応系においてC-22側鎖不飽和化活性を確認した.以上の結果はCYP710Aの持つステロール側鎖不飽和化活性が,高等植物のみならず植物機能として幅広く保存されることを示している.
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© 2007 日本植物生理学会
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