抄録
D-マンノース/L-ガラクトース(D-Man/L-Gal)経路は、高等植物で最も主要なアスコルビン酸(AsA)生合成経路である。これまでに同経路に関わるほぼ全ての代謝酵素が遺伝子レベルで解明されたが、GDP-L-GalからL-Gal-1Pへの変換を触媒する酵素は唯一未同定である。そこで本研究では、同触媒反応に関わる酵素について解析した。エンドウ子葉軸およびシロイヌナズナから調整した粗酵素液を用いてGDP-L-Gal触媒反応を調べたところ、無機リン酸依存的にGDPが生成すること、フォスファターゼ処理後の反応液にはL-Galの生成が認められることから、同反応は新規酵素GDP-L-Galフォスフォリラーゼにより進行することが示された。葉中AsA含量が野生株の約20%程度まで減少したシロイヌナズナ変異体より同定されたVTC2遺伝子の推定アミノ酸配列中には、ヌクレオチド代謝酵素に見られるHITモチーフが存在することからVTC2の機能について解析した。3つのvtc2アリルはいずれも顕著なGDP-L-Galフォスフォリラーゼ活性の低下が認められた。大腸菌で発現させた組換え体VTC2はGDP-L-Galフォスフォリラーゼ活性を示すこと、またその変異酵素では触媒効率の低下が認められた。以上のことから、VTC2遺伝子はGDP-L-Galフォスフォリラーゼをコードしていることが明らかになった。