抄録
UVB (280~320 nm) 量の増加は、植物の生育阻害を引き起こす。これまでに我々はイネを材料に、1)UVB感受性は品種間で異なる、2)この品種間差異は、シクロブタン型ピリミジン二量体 (CPD) を修復するCPD光回復酵素遺伝子の突然変異に由来する酵素活性の違いに起因している可能性を指摘した。本研究ではこの可能性を実証するために、イネでUVB抵抗性を示すササニシキ、感受性を示す農林1号、さらにはインド型品種で超感受性を示すサージャンキに、ササニシキ由来のCPD光回復酵素遺伝子をセンスまたはアンチセンス方向に導入した形質転換体を作製し、これらを材料にCPD光回復酵素活性とUVB感受性との関係について解析した。各野生型にセンス方向に導入した形質転換体は、どれも転写レベルで約20~150倍、活性レベルで約5~50倍増加していた。一方、アンチセンス形質転換体はほとんど活性を検出できなかった。これら形質転換体と野生型をUVB付加条件下で生育させたところ、各センス系統は野生型と比較して、UVBによる生育傷害が軽減され、アンチセンス形質転換体は、生育に致命的な影響を受けた。以上のことから、イネ品種間のUVB感受性はCPD光回復酵素活性によって決定されており、CPD光回復酵素活性を増加させることで、UVB抵抗性を獲得できることが、本実験により実証された。