抄録
マメ科植物は共生関係の構築において、パートナーである根粒菌を誘引するために、フラボノイド系の化合物を根から土壌中に分泌する。このフラボノイドの分泌は、共生関係構築の過程で最も初期の現象と位置づけられ、根粒形成に重要であることが広く認識される反面、その輸送機構に関してはこれまで未知であった。そこで本研究では、ダイズの根におけるゲニステイン分泌をモデル系として、フラボノイドの膜輸送を生化学的に解析することにした。
窒素欠乏条件下で栽培したダイズ(Glycine max)の根から粗膜画分を調製し、ショ糖密度勾配遠心法により分離した。細胞膜画分(30/40%画分)を用いてATP依存的なゲニステイン輸送を経時的に測定すると、ATP存在下でのみゲニステイン輸送の上昇が認められた。種々の阻害剤を用いて輸送特性を解析すると、ゲニステイン輸送はP型ATPaseやABC蛋白質の阻害剤であるortho-vanadateによって60%近く阻害されたが、イオノフォアであるgramicidin D、nigericin、valinomycinによってはほとんど阻害されなかった。このことから、ダイズの根からのゲニステイン分泌にはABC蛋白質が関与することが強く示唆された。年会では速度論的解析や窒素栄養による輸送活性の影響についての結果も併せて報告する。