抄録
動物の比較ゲノム解析により、発生に関わる遺伝子族は左右相称性動物の祖先段階で確立されていたことが明らかとなった。一方、陸上生物のもう一つの大きな系統である陸上植物では、系統間で著しい形態、発生過程の違いが知られている。このような発生過程を制御している遺伝子がどのように進化してきたのかは、非被子植物のゲノムデータの欠如からよくわかっていなかった。本研究では、小葉類イヌカタヒバSelagienlla moellendorffii、コケ植物セン類ヒメツリガネゴケPhyscomitrella patensのwhole genome shotgun配列情報を利用して、約700のシロイヌナズナの発生過程に関わる遺伝子ホモログの系統解析を行った。その結果、従来知られていた発生多様性に関わらず、非被子植物は被子植物の持つほとんどの遺伝子族を保有していることがわかった。一方、発生多様性を導いている原因として、(1)被子植物特異的遺伝子族の存在、(2)遺伝子の機能転換、(3)各系統におけるいろいろな遺伝子族の平行的な遺伝子重複による遺伝子の機能分化が関係しているらしいことがわかった。