日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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細胞増殖を促進する突然変異がan3 における補償作用に与える影響の解析
*堀口 吾朗塚谷 裕一
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p. 151

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抄録
シロイヌナズナのangustifolia3 (an3) 突然変異株は、葉の細胞数が野生株の1/3に減少する一方、細胞サイズが1.5 倍に増加する、いわゆる補償作用を示す。この現象は、葉の発生過程において、細胞増殖と細胞伸長を調和させる機構の存在を示唆している。今回、an3 における補償作用の誘導条件を検討するため、葉の細胞数が増加するgrandifolia1-D (gra1-D)、jaw-D両突然変異体やKNAT1 過剰発現体 (KNAT1 OE) とan3との間で2重変異株を作製し、その表現型の解析を行った。これら3種類の突然変異はいずれも、an3 背景においても細胞数を増加させる効果があった。そのうちan3 jaw-Dan3 KNAT1 OEでは補償作用が打ち消され、細胞サイズが野生株に近づいた。一方、興味深いことに、an3 gra1-D変異の細胞サイズはan3 の細胞サイズと同等であり、補償作用が全く打ち消されていないことが明らかになった。これらの結果は、補償作用の誘導に関し、細胞数の減少それ自体必要ではなく、ある種の細胞増殖経路の異常が引き金となっている可能性を示唆する。そこで、AN3, KNAT1, JAWGRA によって制御される細胞増殖制御系の異同を調べるための実験を行っている。その結果、gra1-Dでは細胞増殖の正の制御因子であるAINTEGUMENTACYCLIN D3;1が過剰発現していることが明らかになった。現在その他の突然変異株についても、各種のマーカー遺伝子を用いた発現解析を進めており、その結果についても報告する。
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© 2007 日本植物生理学会
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