日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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逆方向の補償作用を示す変異体の解析
*宇佐見 健堀口 吾朗塚谷 裕一
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p. 153

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抄録
植物の葉は、葉原基における細胞増殖と、その後の液胞化による細胞伸長によって形成される。これらの過程は互いに独立ではなく、協調して起こっている。補償作用とは、葉の発生において細胞増殖の異常により細胞数が減少すると、それを補うかのように個々の細胞が肥大し、葉面積の低下が緩和される現象である。我々はこの現象を、葉において細胞増殖と細胞伸長を協調させている未知のメカニズムを反映したものと捉え、近年様々な研究を進めている。しかし、未だ不明な点が多い。
このメカニズムを解明する一策として、今回我々は逆方向の補償作用、つまり細胞数が増加し、細胞サイズが低下するという表現型を示す変異体に着目した。既に堀口らによってスクリーニングされていた、葉の細胞数と細胞サイズが異常になるシロイヌナズナ突然変異体の中から(Horiguchi et al. 2006)、細胞数増大と細胞サイズの低下を共に示す変異体を4系統単離した。これらの変異体の第1葉における細胞増殖や細胞伸長のタイムコースを調べてみたところ、全ての系統で野生株より細胞増殖の期間が延びていたが、細胞の伸長速度は、野生株と同程度ながら伸長している期間が短い系統と、伸長速度が野生株より遅い系統とがあった。後者では、細胞増殖活性の上昇に応じて、細胞伸長が抑制されていると考えられる。現在、より詳細な表現型の解析と、原因遺伝子のクローニングを行っている。
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© 2007 日本植物生理学会
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