抄録
ヒメツリガネゴケの葉緑体光定位運動では、フォトトロピン依存の青色光反応にはアクチンフィラメントと微小管が、フィトクロム依存の赤色光反応には微小管が関与することが報告されている(Sato et al., 2000)。従来、細胞骨格の可視化に用いられてきたGFPは青色光励起であるのに対し、RFPであるtdTomato(Shaner et al., 2004)は緑色光で励起するため、青色光によって誘導される葉緑体光定位運動に干渉しない。したがってtdTomatoでラベルしたヒメツリガネゴケのアクチンフィラメント可視化株では、青色光誘導による葉緑体光定位運動にともなうアクチン構造変化の詳細な観察が可能である。GFP-talin発現株においては、1分ごとのタイムラプス撮影で葉緑体光定位運動を誘導できないが、tdTomato-talin発現株では5秒ごとの撮影でも反応を誘導できる。本研究では、この系を使い、ヒメツリガネゴケの青色光誘導による葉緑体光定位運動において特徴的に観察されるアクチンのメッシュワーク構造の形成過程、および形成後のダイナミクスについて解析を行った。その結果、アクチンメッシュワークの形成は、光刺激によって運動している葉緑体上あるいはその近傍の細胞膜から生じ、メッシュワーク形成後もメッシュワークを構成するアクチンフィラメントはダイナミックな動きを示すことがわかった。