抄録
アクチン繊維は細胞の分裂や伸長など植物の形態形成に関わる現象に深く関与する。これまでに我々は液胞に近接したアクチン繊維の局在や、液胞構造の維持を通したアクチン繊維による細胞内構造の制御機構について報告してきた(Higaki et al. 2006)。一方、アクチン繊維は気孔の開閉を担う孔辺細胞の運動にも関与すると考えられている。本研究では、アクチン繊維による気孔開閉の制御機構の可能性について検討するため、孔辺細胞におけるアクチン繊維の動態解析を試みた。まず、GFPとアクチン繊維結合ドメイン(AtFim1 ABD2)との融合タンパク質を恒常的に発現するシロイヌナズナ植物体を作出し、孔辺細胞アクチン繊維の観察に最も適したラインを選抜した。スピニングディスク式共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察したところ、孔辺細胞のアクチン繊維は数秒単位で盛んに運動していることがわかった。また、気孔に対するアクチン繊維の角度を顕微鏡画像から半自動的に算出する画像解析システムを開発し、アクチン繊維の配向が日周変化する可能性を検討した。その結果、開口時には表層アクチン繊維は放射状に配向し、閉口時にはランダムな配向に変化することが定量的に示された。さらに、アブシジン酸処理によるアクチン繊維動態についても解析を進めており、その結果と併せて気孔開閉におけるアクチン繊維の役割について議論する。