日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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恒常的な重力・物理的刺激はエチレン産生量よりもエチレン応答を向上させる
*岡本 崇Rahman Abidur高地 博寛大野 豊鶴見 誠二
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p. 174

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抄録
植物が重力方向に沿って育っている状態(縦)と、常に障害物に遮られて重力刺激・物理的刺激を受けている状態(横)とでは植物の成長にどのような違いがあるのだろうか。 透析膜を敷いた寒天培地上で3日間育てたArabidopsis thalianaの根の伸長を縦と横の間で比較したところ、横方向の場合に根の成長が縦に比べ約半分(0.57倍)となった。 エチレン関連ミュータントを使用した実験の結果、エチレンシグナル系が関わっていることが明らかとなった。 これは、横方向の環境では、根の先端が常に重力と物理的刺激の影響を受けているためと考えられる。 エチレン産生量を比較したところ縦と横の間で有意な差は見られなかったが、エチレン応答遺伝子ERF(Ethylene Responsive Factor)と BACH(Basic chitinase)のmRNAの発現量は、横方向で育成した場合、縦の状態に比べてそれぞれ5.2倍、2.7倍と上昇していることがリアルタイムPCRを用いて明らかとなった。 横方向で育成した時にエチレン応答遺伝子の発現が上昇する機構についても議論する予定である。
植物生理学者は、植物の成長への化学物質の影響を見るためにしばしば濾紙上において根の伸長を観察するが、少なくともエチレン応答遺伝子が常に加算されていることに注意を払うべきかもしれない。
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© 2007 日本植物生理学会
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