抄録
COP9シグナロソーム(CSN)は、ユビキチン・プロテアソーム系を介したタンパク質分解を制御するタンパク質複合体であり、動植物の発生に不可欠である。本研究は、シロイヌナズナを用いてCSNサブユニット1(CSN1)とその結合因子との相互作用を解析することにより、CSNの生体内での新規機能を明らかにすることを目的としている。
CSN1結合因子の一つであるSAP130は、スプライソソームを形成するU2snRNPを構成するタンパク質であり、遺伝子転写調節に関わるSTAGAやTFTCタンパク質複合体と相互作用する。シロイヌナズナのSAP130は、第3染色体上に2コピー存在し(SAP130a, SAP130b)、100%相同なタンパク質をコードしている。mRNAの発現解析から、両遺伝子がともに植物の全器官で発現しており、SAP130bの発現はSAP130aよりも高いことが明らかになった。また、シロイヌナズナよりSAP130のcDNAを単離し、大腸菌を用いて発現させた。これを用いた共沈降法により、CSN1とSAP130がin vitroで結合することを明らかにした。さらに、Yeast-Two-Hybrid法を用いたin vivoの解析結果についても報告する。これらの結果より、CSNとSAP130の相互作用が、タンパク質分解とmRNA代謝において担う役割について議論する。