日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのスフィンゴイド長鎖塩基1-リン酸の代謝経路とフモニシンB1応答に関する生理機能
岩本 照子*今井 博之
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p. 183

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抄録
フモニシンB1(FB1)は、植物のプログラム細胞死を誘導する。FB1はスフィンゴ脂質代謝系のセラミド合成を阻害し、細胞内に遊離のスフィンゴイド長鎖塩基(LCB)を蓄積させることから、細胞死の誘因となるシグナルの一つが、細胞内のLCBレベルの増加にあるといわれている。一方、LCBの蓄積を回避する機構として、LCBをリン酸化し、LCB-1-リン酸を合成する代謝経路が存在する。LCB-1-リン酸リアーゼ(SPL)は、LCB-1-リン酸をC16アルデヒドとホスホエタノールアミンに分解する酵素であるが、我々は最近、シロイヌナズナのこの遺伝子AtSPL1が破壊された突然変異株(spl1-1spl1-2)の葉片をFB1で処理し、葉片からの電解質の漏出程度を調べたところ、野生型と比較して48時間以降に著しい漏出率の増加を認めた。さらに、FB1を96時間処理したspl1-1およびspl1-2において、葉脈周辺にスポンジ状の組織崩壊が観察された。この現象がLCB-1-リン酸による蓄積によって引き起こされるのか、現在解析中である。一方、spl1-1およびspl1-2のホスファチジルエタノールアミン(PE)やホスファチジルコリン(PC)の全脂質に占める割合は、野生株と比較して減少していた。本発表ではLCB-1-リン酸によって制御される PE、PC代謝系についても考察する。また、スフィンゴ脂質生合成の初発酵素セリンパルミトイルトランスフェラーゼの遺伝子発現に及ぼすFB1の影響をタバコBY-2細胞で解析したので、その結果を報告する。
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© 2007 日本植物生理学会
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