抄録
高温がイネ種子登熟代謝に及ぼす影響を明らかにするために、乳熟期のイネ頴花に高温処理を施した。高温登熟応答性遺伝子がマイクロアレイ解析およびディファレンシャルスクリーニングによって同定され(2006年度年会)、さらに定量RT-PCRによる詳細な発現解析を行った結果、高温によってGBSSI、BEIIb等のデンプン合成関連遺伝子の発現が抑制され、デンプン分解に関与するα-amylaseおよびHSP遺伝子の発現が誘導された。また、高温下で登熟した玄米の胚乳に含まれるデンプンを分析したところ、アミロース含量の低下およびアミロペクチン側鎖の伸長が観察された。これらの変化はそれぞれGBSSIおよびBEIIbの発現低下に起因していると考えられる。さらに、種子貯蔵タンパク質の分析によって、高温登熟玄米中では13kDプロラミンが減少していることが見出された。高温条件で登熟した米粒は外観が著しく白濁化して粒重が低下するが、高温によって影響を受ける登熟代謝と玄米の白濁化の関連性について考察する。