抄録
サイクリックGMP(cGMP)は動物の視覚や血管弛緩における細胞内情報伝達の重要なセカンドメッセンジャーであるが、植物におけるその機能は不明確である。我々は、フィトクロームの光シグナル伝達のセカンドメッセンジャーとして、cGMPがアントシアニンの合成やカルコン合成酵素遺伝子(chs)の発現を誘導することを報告したが、その分子機構の詳細は不明である。今回、ダイズ光独立栄養培養細胞(SB-P細胞)を用いて、多くのフラボノイド合成系遺伝子の発現がcGMPによって誘導されることを明らかにした。また、これらのcGMP応答性遺伝子は一酸化窒素(NO)にも応答すること、SB-P細胞中のアントシアニン量がcGMP、NOおよび光照射により増加したことから、cGMPとNOはフラボノイド合成を誘導する光シグナル伝達のセカンドメッセンジャーとしてリンクして機能していることが示唆された。一方、cGMPによる遺伝子発現調節機構を転写レベルで解明するため、カルコン還元酵素遺伝子(chr)のプロモーターを一過的遺伝子発現系で解析した。その結果、chrの推定転写開始点から上流-576~-991 bpの領域がcGMP応答に必要であることが示唆された。現在、薬理学的方法により、フラボノイド合成系酵素遺伝子群の発現調節とフィトクロームシグナル伝達経路との関連を解析中である。