抄録
植物の代謝経路の最終段階において、低分子化合物に糖を付加することにより二次代謝産物の多様性に寄与している配糖化酵素は、有用物質の水溶性、安定性の向上、毒性軽減、生理活性や機能性の増大が期待できることから、植物バイオテクノロジーのターゲットとしても非常に重要視されている。植物配糖化酵素の機能解析については、保存性の高いアミノ酸残基を中心に、酵素間で共通したドナー基質の認識、結合や触媒機構などを担うアミノ酸残基の役割の解明が進められているが、酵素の個性ともいえるアクセプター基質の認識や触媒活性に関与しているアミノ酸残基についての解析はほとんどなされていない。我々はこれまでに、ニチニチソウ由来クルクミン配糖化酵素CaUGT2においてはPSPG-box中のCys377が活性発現に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。そこで、本研究では部位特異的変異導入法によってこのアミノ酸残基を置換した変異酵素を作製し、酵素活性を測定した。その結果、C377G、C377Aの置換によってはKm、kcatともほとんど影響はみられなかったが、C377N、C377D、C377Yではkcatが減少し、C377R、C377Wでは活性は消失した。これらの結果から、CaUGT2の触媒効率は377位のアミノ酸残基の側鎖の立体的な大きさに依存している可能性が示唆された。