抄録
アサガオの花色変異体の中で、a-3、r-1、r-3、speckled変異体は、各々アントシアニン生合成系遺伝子DFR、CHS、ANS、CHIの自然突然変異で、白色花か淡黄色花を咲かせ、茎は緑色で黒い種子を付ける。ここでは、白色花を咲かせるが、赤色の茎と黒色の種子を付与するc-1変異及び緑色の茎と象牙色の種子を付与するca変異について同定をおこなった。我々は、先ずアントシアニン生合成系遺伝子の転写制御に関わると思われる3種類のR2R3-MYB転写因子(InMYB1~3)、3種類のbHLH転写因子(InbHLH1~3)、2種類のWDR因子(InWDR1、2)をコードする遺伝子を単離し、器官特異的な遺伝子発現の解析を行い、次に、c-1がInMYB1遺伝子に生じた2 bpの欠損変異、caがInWDR1遺伝子に生じた7 bpの挿入変異であることを明らかにした。InMYB1とInWDR1はペチュニアのAN2、AN11ホモログであるが、転写を活性化するアントシアニン生合成系遺伝子のセットは異なっており、ペチュニアのAN2とAN11が司る液胞のpHの調節には関与しないことが示唆された。また、InWDR1についてはAN11が係わる種子の着色に加えて、種皮のトライコーム形成にも関与することを明らかにした。今回単離した転写制御因子をコードする遺伝子の表皮細胞の分化における役割についても議論する。