抄録
【目的】イネSekiguchi-lesion (sl) 変異体は過敏感細胞死に類似したrun away型の細胞死を自発的に起こし、イネいもち病に対して抵抗性を示す。最近Map based cloningが行われ、sl変異の原因遺伝子としてシトクロムP450遺伝子 (CYP71P1) が単離された。本研究ではsl変異体の代謝プロファイル分析を行い、CYP71P1の触媒する反応およびその基質を同定することを目的とした。
【方法と結果】野生株(cv. Kinmaze, WT)、sl変異体 (SL)、sl変異体に野生株由来のCYP71P1を過剰発現させた株(OX)の懸濁培養細胞から代謝物を80%MeOH水溶液で抽出し、LC-ESI-MS(島津LCMS-2010)を用いたノンターゲット型代謝プロファイリング分析に供した。データ解析の結果、SLで強度が弱く、WT, OXで強いm/z 177のピーク、および、SLで強度が強く、WT, OXでは弱くなるm/z 161のピークを見出した。精密質量数測定およびMS/MS分析から、これらをserotonineおよびtryptamineと同定した。同じ表現型は変異体の葉でも見られた。以上の結果からCYP71P1はtryptamineをserotonineに変換するtryptamine 5-hydroxylaseであると推測された。