抄録
硫黄欠乏条件のシロイヌナズナの代謝物と転写物の経時的変化をinfusion FT-MSとDNAアレイで非ターゲットに検出し,一括学習自己組織化マッピング (BL-SOM) を用いてクラスタリングした結果,同調的な経時的変化を示したメチオニン (Met) 由来のグルコシノレート (MET-GSL) と既知の遺伝子を含む MET-GSL 生合成遺伝子候補がそれぞれ同一区画にマッピングされた.シロイヌナズナには Met 側鎖の炭素が2~6個伸長した MET-GSL が同定されている.この Met の側鎖伸長反応は,ロイシン (Leu) 生合成反応に類似しており,Met の側鎖伸長遺伝子 (MET-ELONG) は Leu 生合成遺伝子のホモログであると推定される.そこで,BL-SOM で推定された MET-ELONG 候補遺伝子群の T-DNA 挿入遺伝子破壊シロイヌナズナの成分変化を調べた結果,側鎖伸長が進んだ MET-GSL が野生型と比較して顕著に減少した.この結果から,トランスクリプトミクスとメタボロミクスの統合解析で推定された遺伝子ホモログが側鎖伸長された MET-GSL 生合成に必須な生合成遺伝子であることが明らかになった.