抄録
FT-ICR-MSは、高分解能、高質量精度などの特徴を持つことから、植物のメタボローム解析において主要な分析機器の一つである。また、LCと組み合わせることにより、同一質量を持つ物質を分離することができ、さらに精密な分析結果が得られる。しかしLCを用いると、スキャンポイントごとに分析を行うので、データ構成がより複雑になる。よって、試料を分析器に直接導入するフローインジェクション法に比べ、解析もより困難になる。現状では、ユーザがデータを1つずつ確認し、有益なピークの拾い出しを行っているが、数千のスキャンにおいておのおの千ほども検出される分析データを全て把握するには多大な時間と労力を要する。そこで我々は、各スキャンにおける検出m/z値のずれを内部標準物質データにより補正し、スキャンごとのm/zデータを対応付け、さらにピーク検出を一斉に行うコンピュータシステムを、Javaを用いて開発した。確実にピークを特定できれば、マススペクトルにおける同位体パターンも推定でき、そのピーク物質の絞込みを効率的に行うことができる。本発表では、トマトを例とし、解析手法について紹介する。本システムを用いて解析・蓄積されたデータは、代謝物アノテーション作成や、そのデータベース化に役立ち、LC/FT-ICR-MSを用いたメタボローム解析におけるスタンダードとなることが期待される。