日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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Thermosynechococcus elongatus光化学系IIにおけるP680リガンドの酸化還元電位への影響
*杉浦 美羽Boussac Alain野口 巧Rappaport Fabrice
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p. 233

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抄録
光化学系II反応中心に局在する二量体クロロフィルP680は、水の酸化の駆動力となるために、その酸化還元電位は+1.2 Vと推定されており、生物界で最も高い。しかし、その高い電位を保持するための鍵となる分子構造については不明である。本研究では、P680のリガンドとなるアミノ酸が酸化還元電位に及ぼす影響を調べることを目的とし、D1側のP680のクロロフィル(PD1)のリガンドであるHis198をGlnおよびAlaに置換した好熱性シアノバクテリアT. elongatusの部位特異的変異株を作製し、構造変化に伴う機能の変化を調べた。
どちらの組換え体も光独立栄養条件で生育したが、アンテナ色素であるフィコシアニンからアロフィコシアニンを通って光化学系IIへのエネルギー移動の効率は、野生株に比べて悪かった。単離した光化学系IIコア複合体は野生株のそれと同じ高い酸素発生活性を示した。FTIRによるP680/P680+差スペクトルにおいて、特にD1-H198Qでは、そのPD1の一部の構造に変化が認められた。この株のS2QA-およびS2QB-の熱発光温度は野生株よりも高く、また、閃光照射吸収スペクトルは長波長側にシフトしていた。これらの結果から、PD1のリガンドは、P680の酸化還元電位に関与していることが明らかとなった。
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© 2007 日本植物生理学会
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