日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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炭酸水素イオンは酸素発生マンガンクラスターの配位子か?:赤外分光法による解析
*青山 智佳鈴木 博行杉浦 美羽野口 巧
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p. 235

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抄録
光化学系IIにおいて、炭酸水素イオンがQA、QB間に位置する非ヘム鉄に結合していることは既に知られている。一方、炭酸水素イオンがMnクラスターの配位子として、酸素発生反応に関与している可能性が報告されているが、その詳細は未だ不明である。本研究では、赤外分光法を用いて、炭酸水素イオンとマンガンクラスターとの相互作用を調べた。通常の炭酸水素イオン、または13Cで同位体置換した炭酸水素イオンを光化学系II試料に加え、酸素発生系の各S状態遷移(S1→S2、S2→S3、S3→S4、S0→S1)の閃光誘起フーリエ変換赤外差スペクトルを測定した。(H12CO3-―H13CO3-)二重差スペクトルを計算すると、1閃光目のスペクトルのみに炭酸水素イオンのバンドが観測され、2~4閃光目のスペクトルには、同位体効果は全く見られなかった。Mnを除去した光化学系II試料を用いて非ヘム鉄の差スペクトル(Fe2+/Fe3+)を測定し、13C置換によって非ヘム鉄に結合する炭酸水素イオンのバンドを検出した。その結果、このスペクトルはS状態測定の1閃光目の二重差スペクトルと一致し、そこで観測されたバンドは非ヘム鉄由来であることが明らかとなった。これらの結果から、酸素発生系の各S状態遷移において構造変化する炭酸水素イオンは存在しないことが示された。このことは、炭酸水素イオンがMnクラスターの配位子ではないことを強く示唆している。
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© 2007 日本植物生理学会
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