日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネ フィトクロム変異株を用いた分げつ数制御機構の解析
*稲垣 言要廣瀬 竜郎譲原 奈津須藤 しづ江高野 誠
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p. 236

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抄録
イネの「分げつ」は側枝に相当する器官で、強勢の分げつは茎の先端に穂をつけることから、その多寡は収量に影響する重要な農業形質である。イネを密植した場合、この分げつの出現は抑制されることが知られているが、この応答制御に関わる分子機構については知見が乏しい。一方、他の植物の研究からは、植物の密植応答は葉陰で高まる遠赤色光/赤色光の比が主にフィトクロムB(phyB)によって検知されて誘導されることが示されている。そこで、イネにおいて分げつ出現の抑制という形で現れる密植応答がフィトクロム制御下にあるかを、疎植・密植両条件で各種フィトクロム変異株を栽培することで解析した。コントロールとして栽培した日本晴は、密植により分げつの数を有意に減らした。加えて、今回調査したフィトクロム変異株(phyA, phyB, phyC, phyAphyC, phyBphyC)では、全てにおいて正常な分げつ出現の抑制が密植時にのみ観察された。ここで注目すべきことは、phyBを欠損しても分げつの数については正常な密植応答が見られることで、このことは、イネではphyB が密植検知に必須でないことを示している。これまでの結果から、現段階では二つの可能性が残された。(1)イネではphyAがphyB同様に密植検知に関わる。(2)イネの密植検知にはフィトクロムが関与しない。現在、その二つの可能性について検討を加えている。
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© 2007 日本植物生理学会
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