抄録
前演題では細胞壁パープルホスファターゼの基質α-キシロシダーゼが脱リン酸化されることにより、キシロシダーゼ活性が抑制されるとともに、細胞分裂速度が速まることが示された。α-キシロシダーゼが不活性化されると、キシログルカンオリゴ糖量が増加することが推察される。本演題ではキシログルカンオリゴ糖による細胞の増殖促進効果について検討したので報告する。
蛍光標識されたキシログルカンオリゴ糖(XXXG)をMS培地に添加し、それらが取り込まれる部位と細胞の肥大効果を観察した。細胞分裂初期においてXXXGは細胞の中央部(細胞板が形成される位置)の細胞壁にバンド状に取り込まれた。細胞分裂後期から終期においてXXXGは細胞板に特異的に取り込まれた。間期では細胞の伸長方向と垂直な方向に繊維状に壁に取り込まれた。一方、キシログルカンは、細胞周期に関わらず常に細胞壁全体に均一に取り込まれた。また、XXXGによる細胞の肥大効果については、細胞板が形成される分裂後期から終期、また、間期において、長軸方向と垂直な方向、長軸方向ともに約3倍の肥大促進効果が観察された。
従って、パープルホスファターゼは、キシログカンオリゴ糖を蓄積させて、細胞の増殖速度をコントロールしていることが推察された。