抄録
パープルホスファターゼ(NtPAP12)を構成発現するタバコ細胞の研究から、パープルホスファターゼは細胞の増殖速度を促進すると考えられた。本研究はタバコ培養細胞で示されたホスファターゼの機能をシロイヌナズナで検証することを目的に行った。
NtPAP12を構成発現するシロイヌナズナ、NtPAP12と最も相同性の高いAtPAP10 にTタグが挿入された遺伝子破壊株を用いて、これらの表現型を野生型と比較した。AtPAP10 のプロモーターGUS発現株の結果から、AtPAP10は分裂組織で発現し、葉や根では主として維管束で発現した。ロゼット葉表皮細胞のサイズが形質転換体は野生型に比べて約0.3倍に小さくなったが、遺伝子破壊株では差が認められなかった。表皮細胞の数について、形質転換体では約1.5倍に増加したのに対し、遺伝子破壊株では約0.7倍に減少した。これらのことから、ホスファターゼの構成発現は、シロイヌナズナにおいても細胞の増殖速度を促進し、その結果、葉の細胞サイズが小さくなると推察した。